2018年2月22日木曜日

2/21新見先生勉強会

本日の話題はプロポフォールに関してです

最近の論文で、吸入麻酔(セボ) vs プロポで吸入麻酔の方が術後MMSEや死亡率の結果が良いとの報告がありました。
以前から、心臓手術麻酔では死亡率や呼吸器合併症に関して、セボ群の方が予後がよいとの結果がありましたが、非心臓手術に関しては有意差なし、だったので上記論文のインパクトの強さがわかります。
他にも、DES vs SEVではSEVが良い、TIVA vs 吸入麻酔では吸入麻酔の方がAKIのリスクが少ないなどの報告がされています。
全体の流れとしては吸入麻酔(特にセボ)に比べプロポの立場が悪くなっています。
プロポフォールが予後を悪化させる要因として、ミトコンドリアを含むエネルギー代謝関連の障害が指摘されています。(プロフォール・インフュージョン・シンドローム:PISもその仲間です)
原因をザックリまとめますと、プロポがミトコンドリアの脂質2重膜に干渉し、ミトコンドリアをアポトーシに追いやります。それにより、電子伝達系を阻害しエネルギー産生ができなくなること、また、他にもプロポがβ酸化を抑制し、脂質代謝を停滞させること、などの要因により細胞毒性が指摘されているとのことでした。

因みに、好気性代謝を行うミトコンドリアさんが死んでしまうので、エネルギー代謝の中間産物であるピルビン酸は嫌気性代謝され、乳酸が蓄積します。蓄積した乳酸、脂肪酸などが悪さをすることで、PISも起こるようです。
嫌気性代謝が起こりやすい、つまり虚血になりやすい臓器、人工心肺を使った手術では予後に影響を与えるのかもしれない。


今回の勉強会は化学式が多く出現し、集中し続けるのに努力が必要でしたが、とても勉強になりました。

赤嶺













2018年2月15日木曜日

2/14 新見先生 勉強会

本日は症例報告で、「重症ASを持つ患者の股関節置換術」に関してです。

高齢者の約2%がAS(大動脈弁狭窄症)を持っていると言われており、重症になると狭心痛、呼吸障害、失神などを起こす。
症例1
90歳 高血圧、COPD、アルツハイマー認知症、AS(AVA:0.43)、EF:60%、頚部骨折で入院。
BP:98/55、HR:91、酸素2LでSpO2:95%、
局所麻酔+腰神経叢ブロック+鎮静で麻酔する方針となった。
術中、フェンタニルを少量追加で鎮痛コントロールは良好、血圧下げないためにネオシネジンの持続を行った。手術は無事終了し帰室した。7病日に誤嚥し、呼吸状態悪化、その後ARDSとなり、11病日に死亡となった。


症例2
80歳 AS(AVA:0.86)、TR:中等度から重症、EF:60%、CABG後、高血圧、認知症、盲目
頚部骨折で入院。ASに関してはTAVIの適応あるとのことだが、頚部骨折から手術することとなった。
全身麻酔で行う方針となった。術中はネオシネジン持続でバイタル安定し、手術は終了した。3病日に退院した。6病日に調子が悪いと外来受診した。自宅で様子見ることとなったが7病日に自宅で死亡していた。

もともと、股関節術後は心合併症が増えるとされている。
ASの患者では術後に11%に何らかの合併症が起こる、死亡率が5倍になるとの報告もある。
硬膜外麻酔や深部ブロックで行う報告もあるが、抗凝固薬、抗血小板薬を内服している高齢者も多いため、施行できないことも多い。
重症AS患者では手術決定するための4つの要素がある
①術前、術後のQOL
②家族の理解
③手術チームの理解(主治医、麻酔科、循環器、コメディカル)
④経済的問題

当院でも、80-90歳台で重症ASの手術は拒否されてきた方が、頚部骨折で手術に来ることが多くなりました。術後に残念ながら亡くなった方もいらっしゃるため、術前の本人、ご家族へ厳しい説明を行い、ご理解いただければ麻酔を行っています。
今まで麻酔した感想ですが、心不全を繰り返す、少しの負荷で呼吸苦が出るなどの非代償性期のASでは術後に状態が悪化することが多く、逆に、ある程度日常生活を行える、EFが保たれている重症ASの方は無事退院していることが多いと思います。


うちの医局員にも勉強会中に失神(居眠り?)する人いるのですが、まさかAS・・・。

赤嶺















2018年2月8日木曜日

最近の抄読会

「術後呼吸合併症」に関してです。
術後呼吸合併症(Postoperative pulmonary complication: PPC)はmajour手術の1-23%に起こり、心合併症よりも一般的である。PPCとしては呼吸器感染、呼吸不全、胸水、無気肺、喘息などが多い。
リスクとしては年齢、術式、術前の状態が考えられている。
年齢は60-65歳以上がリスク
術式は上腹部(下腹部に比べて最大15倍)、血管手術がリスク
緊急手術では2-6倍、再手術では4-7倍のリスク
術前のSpO2低値が独立因子とされ
SpO2 96%と比較して91-95%では2倍、90%では10倍のリスクとされている。

また修正'(治療)可能なリスクとしては
①COPDやO-SASなどの合併症
②喫煙
③術前貧血(Hb10以下はリスク3倍)
④全身麻酔(2時間以上がリスク)、肺保護換気
⑤残存筋弛緩
⑥胃管
⑦吸気筋トレーニングでリスク減少
⑧硬膜外麻酔でリスク減少
があるので、術前にできるだけ補正を。

また、今年のBJA(PMID:29121283)に驚きの論文が掲載されました。
肺切除術(片肺換気)を受ける患者をセボ群とプロポ群に分け、PPCや予後を検討
結果はなんと、セボ群の方が術後の酸素化がよくPPCも少なく、死亡率も低かった。
(詳細は論文を)
今まで、肺切除術はTIVAが王道と習い、後輩にも教えていましたがまさか・・・。
今後の論文に注目です。

今回の抄読会はボリュームがあったため、プロは早めに無の境地に出発されていました。
頸椎症に気をつけてください。


赤嶺