ご無沙汰しております。
10月からブログ担当になった森本です。更新が滞り申し訳ありません。
板橋中央総合病院は毎日元気に診療を行っています。
本日で当院の診療は終了し来年は1月4日からの診療開始です。
来年はまた板中麻酔科の活動をちょくちょく報告していきたいと思います。
皆さまよいお年をお過ごしください。
本年もお世話になりました。来年も宜しくお願いします。
P.S 管理人も写ってます。
2018年12月29日土曜日
2018年7月20日金曜日
7/17 勉強会
少し遅くなってしまいましたが、今回は7/17の勉強会内容についてご紹介いたします。
テーマは「オレキシン」です。
あれ、一番聞いてほしい医局員がいないようですが……
・オレキシンとは、近年、覚醒と睡眠制御における役割に注目が集まっている神経ペプチド。オレキシン受容体は中枢神経系に広く分布しており、脳幹や視床下部のモノアミン神経系に対して興奮性の影響を与えていると考えられています。
・今回紹介された論文は、Satoshi Toyamaらの共同研究チームによる、
『Nonpeptide Orexin-2 Receptor Agonist Attenuates Morphine-induced Sefative Effects in Rats』
(Anesthesiology 2018; 128: 992 - 1003)
という、麻薬性鎮痛薬による眠気に対する新しい戦略を示したものです。
モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は、しばしば眠気や注意力低下などの副作用が問題となり、服用量を制限すると十分な鎮痛が得られません。この研究では、睡眠覚醒を制御するうえで重要なオレキシン2受容体の選択的作動薬を用いて、モルヒネによる副作用を緩和する可能性について検討しています。
オレキシン2受容体アゴニストとして用いられたのは、YNT-185・HClという物質です。ペプチドは血液脳関門を通過できないため、先行研究ではオレキシンを脳室内投与しているが、この非ぺプチド性の物質は全身投与でも効果を発揮できるとされています。
ラットにYNT-185を投与したところ、モルヒネの鎮痛効果に影響することなく、脳波や行動から観察されるモルヒネの鎮静作用を軽減させることが確認でき、眠気の治療薬としてのオレキシン受容体作動薬の可能性が示されました。
・オレキシンと麻酔薬との関連についての研究結果もいくつかあるようで、動物実験においてオレキシンを脳室内に投与した結果、覚醒を早めたというような結果が報告されています。
・睡眠と覚醒について、臨床的に問題となる疾患とオレキシンの関連についてもいくつかの研究結果があります。オレキシンのノックアウトマウスにYNT-185を投与すると、ナルコレプシーが改善することが報告されています。一方、不眠の治療薬としてのオレキシン受容体拮抗薬は、すでに2014年に商品化されており、スポレキサント(商品名ベルソムラ)をご存知の方も多いかと思います。
・うつ病などに対して精神刺激剤が投与されることがありますが、ナルコレプシーにも適応があり、具体例ではメチルフェニデートやモダニフィル、ペモリン、メタンフェタミンなどが挙げられます。メチルフェニデートやメタンフェタミンは依存性が高いことが問題であり、新しいメカニズムの精神刺激剤として、オレキシンの商品化が期待されます。
オレキシンの臨床応用については、今回の論文も動物実験であり、その有用性がヒトで確かめられるにはまだ時間がかかりそうということでしょうか。
とりあえず、向井プロはオレキシン不足であろうことが分かりました。商品化されたら、一番に投与して効果を見てみたいですね!聞いてますかー?笑
テーマは「オレキシン」です。
あれ、一番聞いてほしい医局員がいないようですが……
・オレキシンとは、近年、覚醒と睡眠制御における役割に注目が集まっている神経ペプチド。オレキシン受容体は中枢神経系に広く分布しており、脳幹や視床下部のモノアミン神経系に対して興奮性の影響を与えていると考えられています。
・今回紹介された論文は、Satoshi Toyamaらの共同研究チームによる、
『Nonpeptide Orexin-2 Receptor Agonist Attenuates Morphine-induced Sefative Effects in Rats』
(Anesthesiology 2018; 128: 992 - 1003)
という、麻薬性鎮痛薬による眠気に対する新しい戦略を示したものです。
モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は、しばしば眠気や注意力低下などの副作用が問題となり、服用量を制限すると十分な鎮痛が得られません。この研究では、睡眠覚醒を制御するうえで重要なオレキシン2受容体の選択的作動薬を用いて、モルヒネによる副作用を緩和する可能性について検討しています。
オレキシン2受容体アゴニストとして用いられたのは、YNT-185・HClという物質です。ペプチドは血液脳関門を通過できないため、先行研究ではオレキシンを脳室内投与しているが、この非ぺプチド性の物質は全身投与でも効果を発揮できるとされています。
ラットにYNT-185を投与したところ、モルヒネの鎮痛効果に影響することなく、脳波や行動から観察されるモルヒネの鎮静作用を軽減させることが確認でき、眠気の治療薬としてのオレキシン受容体作動薬の可能性が示されました。
・オレキシンと麻酔薬との関連についての研究結果もいくつかあるようで、動物実験においてオレキシンを脳室内に投与した結果、覚醒を早めたというような結果が報告されています。
・睡眠と覚醒について、臨床的に問題となる疾患とオレキシンの関連についてもいくつかの研究結果があります。オレキシンのノックアウトマウスにYNT-185を投与すると、ナルコレプシーが改善することが報告されています。一方、不眠の治療薬としてのオレキシン受容体拮抗薬は、すでに2014年に商品化されており、スポレキサント(商品名ベルソムラ)をご存知の方も多いかと思います。
・うつ病などに対して精神刺激剤が投与されることがありますが、ナルコレプシーにも適応があり、具体例ではメチルフェニデートやモダニフィル、ペモリン、メタンフェタミンなどが挙げられます。メチルフェニデートやメタンフェタミンは依存性が高いことが問題であり、新しいメカニズムの精神刺激剤として、オレキシンの商品化が期待されます。
オレキシンの臨床応用については、今回の論文も動物実験であり、その有用性がヒトで確かめられるにはまだ時間がかかりそうということでしょうか。
とりあえず、向井プロはオレキシン不足であろうことが分かりました。商品化されたら、一番に投与して効果を見てみたいですね!聞いてますかー?笑
2018年6月21日木曜日
6/19 勉強会
6/19、ボルベンをテーマとした勉強会がありましたので、内容を簡単にご紹介します。
集中治療領域での使用をもとに行われたRCTでは、ボルベンはRRT(腎代替療法)、AKIのリスクを上げるとして、欧州で2013年に一度販売停止になっていたそうです(知らなかった!)。ただ、研究の条件などをみると、循環動態安定後にHESと対照群の割り付けを行ったなど、一概にボルベンは使えない!とは言えなさそうな結果です。
最近の研究では、(出典は省略させていただきます……多すぎて)
・予定の腹部手術の患者で、膠質液は晶質液よりも死亡率や合併症が少なかった。
・待機の小手術で、ボルベンと5%アルブミンの使用を比較したところ、術後の血清シスタチンC、eGFRの値に有意差はみられなかった。
・小児の心臓手術で、アルブミン+HESとアルブミン+晶質液を比較した研究では、HESを使用した群の方が出血、輸血量が少なく、RRTや死亡率に差はみられなかった。
・ICUの非敗血症患者で、HESと晶質液を比較した試験では、死亡率、RRT、出血、輸血量に有意差はみられなかった。
・ICUの重症敗血症、敗血症性ショック患者の腎機能障害のリスクファクターについて調べた研究では、男性、SAPSⅡ(Simplified Acute Physiology Score)、外科手術後、改善しないSOFAスコアなどがリスクファクターとして挙げられ、膠質液の使用についてはリスクファクターとはならなかった。
・術中/術後のHESの使用は術後腎機能を悪化させなかったが、周術期の出血は増加した。
・マウスの組織を使った研究では、グリコカリックスを破壊したり、血管透過性を亢進することはなかった。
……などなど、HESの害を主張したものは少ないようです。
しかし、この流れの中で、2018年1月に欧州では再度ボルベン販売停止となってしまいました。理由としては、以前のRCTを根拠として、「敗血症などの重症患者でRRTや死亡率が増えるから使用制限をかけたのに、守られていないため、全患者で使用禁止としました!」ということらしいです。
出席していた上級医の先生からは、「確かにICUでの有効な使い道はなさそうだけど、他科の先生はなんとなく使ってしまっているかもしれない」「ope室で、出血が多く輸血が追い付かない場合などに一時的に使用する分には有用だろう」など、感想があがりました。
舟漕ぎのプロがいなくなってから、皆さんとっても真面目に勉強会に参加しているように思います。正直メモとるのに必死で周りのことはあまりみえていませんが。
次回の勉強会も楽しみにしています。
集中治療領域での使用をもとに行われたRCTでは、ボルベンはRRT(腎代替療法)、AKIのリスクを上げるとして、欧州で2013年に一度販売停止になっていたそうです(知らなかった!)。ただ、研究の条件などをみると、循環動態安定後にHESと対照群の割り付けを行ったなど、一概にボルベンは使えない!とは言えなさそうな結果です。
最近の研究では、(出典は省略させていただきます……多すぎて)
・予定の腹部手術の患者で、膠質液は晶質液よりも死亡率や合併症が少なかった。
・待機の小手術で、ボルベンと5%アルブミンの使用を比較したところ、術後の血清シスタチンC、eGFRの値に有意差はみられなかった。
・小児の心臓手術で、アルブミン+HESとアルブミン+晶質液を比較した研究では、HESを使用した群の方が出血、輸血量が少なく、RRTや死亡率に差はみられなかった。
・ICUの非敗血症患者で、HESと晶質液を比較した試験では、死亡率、RRT、出血、輸血量に有意差はみられなかった。
・ICUの重症敗血症、敗血症性ショック患者の腎機能障害のリスクファクターについて調べた研究では、男性、SAPSⅡ(Simplified Acute Physiology Score)、外科手術後、改善しないSOFAスコアなどがリスクファクターとして挙げられ、膠質液の使用についてはリスクファクターとはならなかった。
・術中/術後のHESの使用は術後腎機能を悪化させなかったが、周術期の出血は増加した。
・マウスの組織を使った研究では、グリコカリックスを破壊したり、血管透過性を亢進することはなかった。
……などなど、HESの害を主張したものは少ないようです。
しかし、この流れの中で、2018年1月に欧州では再度ボルベン販売停止となってしまいました。理由としては、以前のRCTを根拠として、「敗血症などの重症患者でRRTや死亡率が増えるから使用制限をかけたのに、守られていないため、全患者で使用禁止としました!」ということらしいです。
出席していた上級医の先生からは、「確かにICUでの有効な使い道はなさそうだけど、他科の先生はなんとなく使ってしまっているかもしれない」「ope室で、出血が多く輸血が追い付かない場合などに一時的に使用する分には有用だろう」など、感想があがりました。
舟漕ぎのプロがいなくなってから、皆さんとっても真面目に勉強会に参加しているように思います。正直メモとるのに必死で周りのことはあまりみえていませんが。
次回の勉強会も楽しみにしています。
2018年6月17日日曜日
レジナビに参加してきました!
本日東京ビッグサイトでレジナビが開催されました。
レジナビとは一つの会場に研修病院が一同に会して行う病院説明会です。
今回は後期研修医の先生の勧誘のために当院からは内科、外科、麻酔科で参加しました。
麻酔科希望の先生は総勢6人ほどの先生が当院ブースにいらしてくださり、麻酔科4年目になる筆者とK門先生で当院麻酔科のプログラムについてお話しさせてもらいました。
皆さんの真剣でかつ新鮮な眼差しに我々は刺激を受けると同時に今後も当院の麻酔科をより発展させていかなければいけないなと強く思いました。
また、今回はまだ現場に出たばかりの一年目の初期研修医の先生の来訪が多く、専門医プログラムの影響からか早期から今後のキャリアについて考えおり、関心するばかりです。
微力ながら当院麻酔科の魅力を伝えることが出来たと思います。久々に各地にいる同期、先輩、後輩達など懐かしい顔にも再会でき、個人的にも大いに楽しませてもらいました。
レジナビとは一つの会場に研修病院が一同に会して行う病院説明会です。
今回は後期研修医の先生の勧誘のために当院からは内科、外科、麻酔科で参加しました。
麻酔科希望の先生は総勢6人ほどの先生が当院ブースにいらしてくださり、麻酔科4年目になる筆者とK門先生で当院麻酔科のプログラムについてお話しさせてもらいました。
皆さんの真剣でかつ新鮮な眼差しに我々は刺激を受けると同時に今後も当院の麻酔科をより発展させていかなければいけないなと強く思いました。
また、今回はまだ現場に出たばかりの一年目の初期研修医の先生の来訪が多く、専門医プログラムの影響からか早期から今後のキャリアについて考えおり、関心するばかりです。
微力ながら当院麻酔科の魅力を伝えることが出来たと思います。久々に各地にいる同期、先輩、後輩達など懐かしい顔にも再会でき、個人的にも大いに楽しませてもらいました。
2018年5月24日木曜日
5/22勉強会
「糖尿病患者の周術期管理」というテーマで勉強会がありましたので、その内容について簡単にご紹介します。
高血糖により、周術期の死亡率が上がったり、創傷治癒遷延、血小板凝集機能低下、免疫能低下、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がるとされている。
①術前管理について
1. 未治療の糖尿病がないか?
・糖尿病と診断されていなくても、多飲多尿やメタボリックシンドローム、心血管疾患の既往があるような患者ではHbA1cの評価をするべき。
・糖尿病がなくても、周術期のストレスでカテコラミン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンなどの上昇が起こり、stress hyperglycemiaという状態になることがある。この場合、ストレスがなくなれば血糖値は低下する。
2. 血糖コントロールについて
・HbA1cが6-8%にコントロールされていれば、そのまま手術にすすんでOK。HbA1c 5%以下、9%以上の場合は緊急手術でなければ延期が望ましい。
・血糖値≧300mg/dLのときは、ケトーシスの評価を行う。糖尿病性ケトアシドーシス(血糖値>250mg/dL、ケトーシス、pH≦7.30、HCO3-≦18mEq/L)と診断されれば、緊急の対応が必要。ただ、尿中ケトンが陰性でも、血中ケトンが陽性になることがあることがあるので注意する。
3. 合併症の評価
・心血管系(虚血性心疾患)、自律神経障害、腎障害などについて評価する。糖尿病性の腎障害は微量アルブミン尿をチェックする。
②手術前日~当日にかけて
・HbA1c<8.5%が目標。
・術前の絶食は1回のみにする。糖尿病関連薬以外の内服薬は、できる限り通常通り継続。糖尿病関連薬は当日朝の分を中止、メトホルミンについては前日夕方から中止する。
・朝一件目の手術とする。
・血糖値は90~180mg/dLでコントロール。90mg/dL未満でグルコース投与、180mg/dL以上でインスリン3単位皮下注、300mg/dL以上で内科医コールなど、対応する。
・手術当日朝から10%グルコース 40ml/hで持続投与開始。
※血糖コントロールができていないが手術を待てない患者、2食以上絶食する患者では、インスリンの持続静注を考慮する。その際、必ずグルコースも投与しながら、1-2時間ごとに血液ガス分析で血糖値の評価をすること。
・麻酔で気をつけること
PONV対策として、TIVAで行う、笑気の使用を避ける、区域麻酔で行うなど。デキサメタゾンを使用する場合は減量する。
また、疼痛管理として硬膜外麻酔が有用。疼痛などによるストレス反応を抑えて血糖値上昇を防ぐことができるが、自律神経障害のある患者では血圧低下に注意する。
③術後管理
インスリンの持続静注をしていた場合、24時間のトータル量の半分を基礎インスリンとしてslow actingの薬へ移行。残りの半分は、速効性インスリンを皮下注して対応しながら、切れ目のないように移行していく。
などなど、盛りだくさんの内容でした。
当科では、血糖コントロール不良の糖尿病患者さんの手術については今まで個々に対応してきましたが、これを機に、共通のプロトコルを作成し病棟とも共有しようという話になりました。
気のせいか、最近ケトアシドーシスの話をよく聞きます。糖尿病コントロール不良のDKA、SGLT2阻害薬内服患者のeuglycemic DKA、食欲不振すぎてstarvation ketoacidosisなど。とくに、A-lineもとられておらず血糖値が正常な例では対応が遅れやすいかと思いますので、おかしいと思ったらすぐ血液ガス、ケトン体測定を心がけたいと思います。
高血糖により、周術期の死亡率が上がったり、創傷治癒遷延、血小板凝集機能低下、免疫能低下、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がるとされている。
①術前管理について
1. 未治療の糖尿病がないか?
・糖尿病と診断されていなくても、多飲多尿やメタボリックシンドローム、心血管疾患の既往があるような患者ではHbA1cの評価をするべき。
・糖尿病がなくても、周術期のストレスでカテコラミン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンなどの上昇が起こり、stress hyperglycemiaという状態になることがある。この場合、ストレスがなくなれば血糖値は低下する。
2. 血糖コントロールについて
・HbA1cが6-8%にコントロールされていれば、そのまま手術にすすんでOK。HbA1c 5%以下、9%以上の場合は緊急手術でなければ延期が望ましい。
・血糖値≧300mg/dLのときは、ケトーシスの評価を行う。糖尿病性ケトアシドーシス(血糖値>250mg/dL、ケトーシス、pH≦7.30、HCO3-≦18mEq/L)と診断されれば、緊急の対応が必要。ただ、尿中ケトンが陰性でも、血中ケトンが陽性になることがあることがあるので注意する。
3. 合併症の評価
・心血管系(虚血性心疾患)、自律神経障害、腎障害などについて評価する。糖尿病性の腎障害は微量アルブミン尿をチェックする。
②手術前日~当日にかけて
・HbA1c<8.5%が目標。
・術前の絶食は1回のみにする。糖尿病関連薬以外の内服薬は、できる限り通常通り継続。糖尿病関連薬は当日朝の分を中止、メトホルミンについては前日夕方から中止する。
・朝一件目の手術とする。
・血糖値は90~180mg/dLでコントロール。90mg/dL未満でグルコース投与、180mg/dL以上でインスリン3単位皮下注、300mg/dL以上で内科医コールなど、対応する。
・手術当日朝から10%グルコース 40ml/hで持続投与開始。
※血糖コントロールができていないが手術を待てない患者、2食以上絶食する患者では、インスリンの持続静注を考慮する。その際、必ずグルコースも投与しながら、1-2時間ごとに血液ガス分析で血糖値の評価をすること。
・麻酔で気をつけること
PONV対策として、TIVAで行う、笑気の使用を避ける、区域麻酔で行うなど。デキサメタゾンを使用する場合は減量する。
また、疼痛管理として硬膜外麻酔が有用。疼痛などによるストレス反応を抑えて血糖値上昇を防ぐことができるが、自律神経障害のある患者では血圧低下に注意する。
③術後管理
インスリンの持続静注をしていた場合、24時間のトータル量の半分を基礎インスリンとしてslow actingの薬へ移行。残りの半分は、速効性インスリンを皮下注して対応しながら、切れ目のないように移行していく。
などなど、盛りだくさんの内容でした。
当科では、血糖コントロール不良の糖尿病患者さんの手術については今まで個々に対応してきましたが、これを機に、共通のプロトコルを作成し病棟とも共有しようという話になりました。
気のせいか、最近ケトアシドーシスの話をよく聞きます。糖尿病コントロール不良のDKA、SGLT2阻害薬内服患者のeuglycemic DKA、食欲不振すぎてstarvation ketoacidosisなど。とくに、A-lineもとられておらず血糖値が正常な例では対応が遅れやすいかと思いますので、おかしいと思ったらすぐ血液ガス、ケトン体測定を心がけたいと思います。
麻酔科学会
もう一週間も前のことになってしまいましたが、先週の5/17~19、日本麻酔科学会が横浜で開催され、参加してきたので報告します。
今回は、麻酔科2年目で唯一当院に残っている佐藤が(他の同期は外病院研修中です)お題をもらい、ポスター発表をさせていただきました。
テーマは「Drainage flow servo-controlled CPBの開発と初期臨床使用経験」とし、当院で導入している新しい人工心肺システムについての内容について話しました。脱血流量と送血流量を連動させるシステムで、脱血不良時でもリザーバレベルが維持され、ポンプ停止を回避できるのが特徴です。と書いてみましたが、こんな雑な説明では怒られてしまいそうですので、もし興味のある方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。新見先生が詳しいところを熱く語ってくださると思います。
ポスター発表自体は複数回経験しておりますが、やはり人前に立って喋ることは何度やっても慣れません。そもそも普通の人工心肺についても熟知しているとは言えない知識レベルですので、討論の時間はずっとひやひやしておりました。
他の方の発表も、着眼点からしてユニークだなと思うものばかりで、大変勉強になりました。
初期研修医時代にお世話になった先生ともお話しする機会もあり、また新たな刺激を受けたりもしました。
緊張したり勉強したり和んだりと、慌ただしい会期でしたが、いろいろな良い経験をさせていただきました。いずれは自分でテーマを見つけて研究発表できるように成長できたらなと思います。
佐藤
今回は、麻酔科2年目で唯一当院に残っている佐藤が(他の同期は外病院研修中です)お題をもらい、ポスター発表をさせていただきました。
テーマは「Drainage flow servo-controlled CPBの開発と初期臨床使用経験」とし、当院で導入している新しい人工心肺システムについての内容について話しました。脱血流量と送血流量を連動させるシステムで、脱血不良時でもリザーバレベルが維持され、ポンプ停止を回避できるのが特徴です。と書いてみましたが、こんな雑な説明では怒られてしまいそうですので、もし興味のある方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。新見先生が詳しいところを熱く語ってくださると思います。
ポスター発表自体は複数回経験しておりますが、やはり人前に立って喋ることは何度やっても慣れません。そもそも普通の人工心肺についても熟知しているとは言えない知識レベルですので、討論の時間はずっとひやひやしておりました。
他の方の発表も、着眼点からしてユニークだなと思うものばかりで、大変勉強になりました。
初期研修医時代にお世話になった先生ともお話しする機会もあり、また新たな刺激を受けたりもしました。
緊張したり勉強したり和んだりと、慌ただしい会期でしたが、いろいろな良い経験をさせていただきました。いずれは自分でテーマを見つけて研究発表できるように成長できたらなと思います。
佐藤
2018年4月14日土曜日
新メンバー紹介!
赤嶺先生にかわりましてブログ担当に任命されました、佐藤です。
ブログのパスワードが分からず、2週目の最後にしてようやくログインすることができました……
新年度になり、二人の新しい専攻医の先生をお迎えしました。太井先生、平田先生のお二人とも、やる気に満ち溢れて眩しいです。優秀な後輩が入ってきて、若干焦っております。
また、加藤先生、近藤先生のお二人は、外回りを終えて、板中に帰ってきてくださいました。お噂はかねがね伺っておりましたが、実際に一緒に働くのは初めてです。いろいろ教えて頂きたいと思っています。
また、残念ながら勉強会の”プロ”は今年度から外病院に行ってしまったため、朝の船漕ぎの様子をレポートすることはできなくなってしまいました。楽しみにしていただいた方がいらっしゃったら申し訳ありません。きっと新しい環境へも、たくましく漕ぎ出して行ったことと思います。
今年度も、板中麻酔科をよろしくお願い致します。
2018年3月15日木曜日
3/14新見先生 勉強会
本日は「体外循環中の脳灌流」に関してです。
脳灌流は順行性脳灌流(ACP)から始まり、その後、低体温循環停止(HCA) +逆行性脳灌流(RCP)やACP+HCAが行われている。
ACP vs RCP、ACPは片側(腕頭動脈のみ)と両側(腕頭+左総頚動脈)どっちが良いか?、低体温の温度は何度が良いか?などの議論がされている。
日本では80%が順行性で行われ、14%が逆行性で脳灌流が行われているが予後に差はなしとされている。
予定弓部置換術の死亡リスクは
①体外循環(CPB)時間、②80歳以上、③CKD、④手術時間とされ、脳灌流の方法は含まれていない。
逆行性灌流では順行性に比べ、死亡率、脳卒中、一過性神経障害に差がないとされるが、ICU期間が延長するとの報告はある。
逆行性がどの程度、脳を灌流できるのか?を調べた研究では、逆行性灌流量100ml中わずか0.01mlのみ脳を灌流するとの報告がある。その他の血流は動脈、静脈シャント、脳実質以外を灌流しているとのこと。
低体温循環停止の安全な時間は体温によって異なる。
37度で5分、25度で14分、20度で21分との報告がある。実際、麻酔が行われていれば、さらに数十分は長く停止できるとされ、麻酔中+20度で40分程度は安全と考えられている。
低体温の分類は
mild:28-34度
moderate:20-28度
deep:14-20度
profound:14度以下
22度以下では脳血流の低下よりも脳代謝の低下が大きいため(血流↓、脳代謝↓↓↓)、相対的に脳保護作用が増強される。
しかし、最近の論文ではprofound管理での死亡率上昇、脳卒中上昇、低心機能が報告され、moderateで管理することが多くなっている。ただし、moderateの欠点として、脊髄麻痺の増加、心停止時間の短縮などが言われている。
最後に順行性を片側か、両側でやるかに関して、30日死亡率、神経障害は有意差なしとなっている。
<今日のプロ>
前日の勉強会では、1人だけ震度7クラスの直下型地震に被災したくらいの凄い頭の揺れでした(首捻挫するんじゃね、と心配になる程)。ある意味皆の注目を集めていましたが、本日はさほど揺れることなく聴講されておりました。プロは4月から神奈川に研修に行きますが、神奈川では揺れないでください、お願いします。そして、頑張ってください。
脳灌流は順行性脳灌流(ACP)から始まり、その後、低体温循環停止(HCA) +逆行性脳灌流(RCP)やACP+HCAが行われている。
ACP vs RCP、ACPは片側(腕頭動脈のみ)と両側(腕頭+左総頚動脈)どっちが良いか?、低体温の温度は何度が良いか?などの議論がされている。
日本では80%が順行性で行われ、14%が逆行性で脳灌流が行われているが予後に差はなしとされている。
予定弓部置換術の死亡リスクは
①体外循環(CPB)時間、②80歳以上、③CKD、④手術時間とされ、脳灌流の方法は含まれていない。
逆行性灌流では順行性に比べ、死亡率、脳卒中、一過性神経障害に差がないとされるが、ICU期間が延長するとの報告はある。
逆行性がどの程度、脳を灌流できるのか?を調べた研究では、逆行性灌流量100ml中わずか0.01mlのみ脳を灌流するとの報告がある。その他の血流は動脈、静脈シャント、脳実質以外を灌流しているとのこと。
低体温循環停止の安全な時間は体温によって異なる。
37度で5分、25度で14分、20度で21分との報告がある。実際、麻酔が行われていれば、さらに数十分は長く停止できるとされ、麻酔中+20度で40分程度は安全と考えられている。
低体温の分類は
mild:28-34度
moderate:20-28度
deep:14-20度
profound:14度以下
22度以下では脳血流の低下よりも脳代謝の低下が大きいため(血流↓、脳代謝↓↓↓)、相対的に脳保護作用が増強される。
しかし、最近の論文ではprofound管理での死亡率上昇、脳卒中上昇、低心機能が報告され、moderateで管理することが多くなっている。ただし、moderateの欠点として、脊髄麻痺の増加、心停止時間の短縮などが言われている。
最後に順行性を片側か、両側でやるかに関して、30日死亡率、神経障害は有意差なしとなっている。
<今日のプロ>
前日の勉強会では、1人だけ震度7クラスの直下型地震に被災したくらいの凄い頭の揺れでした(首捻挫するんじゃね、と心配になる程)。ある意味皆の注目を集めていましたが、本日はさほど揺れることなく聴講されておりました。プロは4月から神奈川に研修に行きますが、神奈川では揺れないでください、お願いします。そして、頑張ってください。
赤嶺
2018年3月8日木曜日
3/7新見先生勉強会
本日はERAS(Enhanced Recovery After Surgery) 術後早期回復プロトコルについてです。
特に腹腔鏡下大腸切除術に対して用いられることが多く、従来術後6日で退院していたのを、術後3日での退院を目指す。
術前から術後までERASコーディネーターが関わり、患者さんの意欲を出させると共に横断的な対応を行う。
ガイドラインの策定、患者教育、看護の標準化などの準備が必要である。
ERASのポイントとして、①術前準備 ②術前術後の経口栄養摂取 ③早期離床、リハビリ ④麻薬は極力減量する ⑤輸液バランス ⑥術後悪心嘔吐(PONV)予防がある。
①術前準備
禁煙、血糖管理、貧血の是正、3-4週間前からプレハビリテーション(軽い運動)
②経口栄養摂取
術前は入室1-2時間前までcarbohydrate飲料の摂取(スポーツドリンク)、術後は帰室後2時間程度で飲水開始(スポーツドリンク)、術後1日目から通常食事開始。
③早期離床、リハビリ
術後0-1日から離床を進める。
④麻薬使用
麻薬、鎮静薬は短時間作用型を使用する。術中の筋弛緩は深くする。執刀前に局所麻酔を行う。硬膜外麻酔の併用。リドカインの静注1-2mg/kg/h。TAPブロックやケタミンの使用。
⑤輸液バランス
術後体重増加を2.5kg以下に抑える。術前に腸洗浄を行っていれば輸液1000ml追加する。
腸洗浄の利益は不明。
⑥PONVリスク患者への標準予防を行う。
上記以外にも胃管は術直後に抜去、尿カテなどは術後1日で抜去。
当院の腹腔鏡下大腸切除術ではパスが使用されている。ERASのポイントである上記項目の多くが行われているが、術後6日での退院予定となっている。
パスでは術後1-3日目まではクリアすべき、チェックすべき項目があるが、3-6日目はその項目はほとんどなく、漫然と入院している可能性がある。その期間を短縮できれば退院日を早められる可能性がある。
術後3日で退院ってかなりスパルタな印象ですが、今後は入院期間をより短くし、回転率をあげる方向に進みそうですね(病院経営的にも・・・)。
本日のプロ動向
新見先生の発言に対して頷いている様子あり(船こぎとは違う)、まさかしっかり聴講しているのかと思いきや、私は目が閉じているのを見逃しませんでした!!
それでも質疑応答で質問してました、耳は起きてるのね、偉い。
(ちなみに、プロは前日待機で夜中まで麻酔してたとのこと、お疲れさまでした)
特に腹腔鏡下大腸切除術に対して用いられることが多く、従来術後6日で退院していたのを、術後3日での退院を目指す。
術前から術後までERASコーディネーターが関わり、患者さんの意欲を出させると共に横断的な対応を行う。
ガイドラインの策定、患者教育、看護の標準化などの準備が必要である。
ERASのポイントとして、①術前準備 ②術前術後の経口栄養摂取 ③早期離床、リハビリ ④麻薬は極力減量する ⑤輸液バランス ⑥術後悪心嘔吐(PONV)予防がある。
①術前準備
禁煙、血糖管理、貧血の是正、3-4週間前からプレハビリテーション(軽い運動)
②経口栄養摂取
術前は入室1-2時間前までcarbohydrate飲料の摂取(スポーツドリンク)、術後は帰室後2時間程度で飲水開始(スポーツドリンク)、術後1日目から通常食事開始。
③早期離床、リハビリ
術後0-1日から離床を進める。
④麻薬使用
麻薬、鎮静薬は短時間作用型を使用する。術中の筋弛緩は深くする。執刀前に局所麻酔を行う。硬膜外麻酔の併用。リドカインの静注1-2mg/kg/h。TAPブロックやケタミンの使用。
⑤輸液バランス
術後体重増加を2.5kg以下に抑える。術前に腸洗浄を行っていれば輸液1000ml追加する。
腸洗浄の利益は不明。
⑥PONVリスク患者への標準予防を行う。
上記以外にも胃管は術直後に抜去、尿カテなどは術後1日で抜去。
当院の腹腔鏡下大腸切除術ではパスが使用されている。ERASのポイントである上記項目の多くが行われているが、術後6日での退院予定となっている。
パスでは術後1-3日目まではクリアすべき、チェックすべき項目があるが、3-6日目はその項目はほとんどなく、漫然と入院している可能性がある。その期間を短縮できれば退院日を早められる可能性がある。
術後3日で退院ってかなりスパルタな印象ですが、今後は入院期間をより短くし、回転率をあげる方向に進みそうですね(病院経営的にも・・・)。
本日のプロ動向
新見先生の発言に対して頷いている様子あり(船こぎとは違う)、まさかしっかり聴講しているのかと思いきや、私は目が閉じているのを見逃しませんでした!!
それでも質疑応答で質問してました、耳は起きてるのね、偉い。
(ちなみに、プロは前日待機で夜中まで麻酔してたとのこと、お疲れさまでした)
赤嶺
2018年2月22日木曜日
2/21新見先生勉強会
本日の話題はプロポフォールに関してです
最近の論文で、吸入麻酔(セボ) vs プロポで吸入麻酔の方が術後MMSEや死亡率の結果が良いとの報告がありました。
以前から、心臓手術麻酔では死亡率や呼吸器合併症に関して、セボ群の方が予後がよいとの結果がありましたが、非心臓手術に関しては有意差なし、だったので上記論文のインパクトの強さがわかります。
他にも、DES vs SEVではSEVが良い、TIVA vs 吸入麻酔では吸入麻酔の方がAKIのリスクが少ないなどの報告がされています。
全体の流れとしては吸入麻酔(特にセボ)に比べプロポの立場が悪くなっています。
プロポフォールが予後を悪化させる要因として、ミトコンドリアを含むエネルギー代謝関連の障害が指摘されています。(プロフォール・インフュージョン・シンドローム:PISもその仲間です)
原因をザックリまとめますと、プロポがミトコンドリアの脂質2重膜に干渉し、ミトコンドリアをアポトーシに追いやります。それにより、電子伝達系を阻害しエネルギー産生ができなくなること、また、他にもプロポがβ酸化を抑制し、脂質代謝を停滞させること、などの要因により細胞毒性が指摘されているとのことでした。
因みに、好気性代謝を行うミトコンドリアさんが死んでしまうので、エネルギー代謝の中間産物であるピルビン酸は嫌気性代謝され、乳酸が蓄積します。蓄積した乳酸、脂肪酸などが悪さをすることで、PISも起こるようです。
嫌気性代謝が起こりやすい、つまり虚血になりやすい臓器、人工心肺を使った手術では予後に影響を与えるのかもしれない。
今回の勉強会は化学式が多く出現し、集中し続けるのに努力が必要でしたが、とても勉強になりました。
最近の論文で、吸入麻酔(セボ) vs プロポで吸入麻酔の方が術後MMSEや死亡率の結果が良いとの報告がありました。
以前から、心臓手術麻酔では死亡率や呼吸器合併症に関して、セボ群の方が予後がよいとの結果がありましたが、非心臓手術に関しては有意差なし、だったので上記論文のインパクトの強さがわかります。
他にも、DES vs SEVではSEVが良い、TIVA vs 吸入麻酔では吸入麻酔の方がAKIのリスクが少ないなどの報告がされています。
全体の流れとしては吸入麻酔(特にセボ)に比べプロポの立場が悪くなっています。
プロポフォールが予後を悪化させる要因として、ミトコンドリアを含むエネルギー代謝関連の障害が指摘されています。(プロフォール・インフュージョン・シンドローム:PISもその仲間です)
原因をザックリまとめますと、プロポがミトコンドリアの脂質2重膜に干渉し、ミトコンドリアをアポトーシに追いやります。それにより、電子伝達系を阻害しエネルギー産生ができなくなること、また、他にもプロポがβ酸化を抑制し、脂質代謝を停滞させること、などの要因により細胞毒性が指摘されているとのことでした。
因みに、好気性代謝を行うミトコンドリアさんが死んでしまうので、エネルギー代謝の中間産物であるピルビン酸は嫌気性代謝され、乳酸が蓄積します。蓄積した乳酸、脂肪酸などが悪さをすることで、PISも起こるようです。
嫌気性代謝が起こりやすい、つまり虚血になりやすい臓器、人工心肺を使った手術では予後に影響を与えるのかもしれない。
今回の勉強会は化学式が多く出現し、集中し続けるのに努力が必要でしたが、とても勉強になりました。
赤嶺
2018年2月15日木曜日
2/14 新見先生 勉強会
本日は症例報告で、「重症ASを持つ患者の股関節置換術」に関してです。
高齢者の約2%がAS(大動脈弁狭窄症)を持っていると言われており、重症になると狭心痛、呼吸障害、失神などを起こす。
症例1
90歳 高血圧、COPD、アルツハイマー認知症、AS(AVA:0.43)、EF:60%、頚部骨折で入院。
BP:98/55、HR:91、酸素2LでSpO2:95%、
局所麻酔+腰神経叢ブロック+鎮静で麻酔する方針となった。
術中、フェンタニルを少量追加で鎮痛コントロールは良好、血圧下げないためにネオシネジンの持続を行った。手術は無事終了し帰室した。7病日に誤嚥し、呼吸状態悪化、その後ARDSとなり、11病日に死亡となった。
症例2
80歳 AS(AVA:0.86)、TR:中等度から重症、EF:60%、CABG後、高血圧、認知症、盲目
頚部骨折で入院。ASに関してはTAVIの適応あるとのことだが、頚部骨折から手術することとなった。
全身麻酔で行う方針となった。術中はネオシネジン持続でバイタル安定し、手術は終了した。3病日に退院した。6病日に調子が悪いと外来受診した。自宅で様子見ることとなったが7病日に自宅で死亡していた。
もともと、股関節術後は心合併症が増えるとされている。
ASの患者では術後に11%に何らかの合併症が起こる、死亡率が5倍になるとの報告もある。
硬膜外麻酔や深部ブロックで行う報告もあるが、抗凝固薬、抗血小板薬を内服している高齢者も多いため、施行できないことも多い。
重症AS患者では手術決定するための4つの要素がある
①術前、術後のQOL
②家族の理解
③手術チームの理解(主治医、麻酔科、循環器、コメディカル)
④経済的問題
当院でも、80-90歳台で重症ASの手術は拒否されてきた方が、頚部骨折で手術に来ることが多くなりました。術後に残念ながら亡くなった方もいらっしゃるため、術前の本人、ご家族へ厳しい説明を行い、ご理解いただければ麻酔を行っています。
今まで麻酔した感想ですが、心不全を繰り返す、少しの負荷で呼吸苦が出るなどの非代償性期のASでは術後に状態が悪化することが多く、逆に、ある程度日常生活を行える、EFが保たれている重症ASの方は無事退院していることが多いと思います。
うちの医局員にも勉強会中に失神(居眠り?)する人いるのですが、まさかAS・・・。
高齢者の約2%がAS(大動脈弁狭窄症)を持っていると言われており、重症になると狭心痛、呼吸障害、失神などを起こす。
症例1
90歳 高血圧、COPD、アルツハイマー認知症、AS(AVA:0.43)、EF:60%、頚部骨折で入院。
BP:98/55、HR:91、酸素2LでSpO2:95%、
局所麻酔+腰神経叢ブロック+鎮静で麻酔する方針となった。
術中、フェンタニルを少量追加で鎮痛コントロールは良好、血圧下げないためにネオシネジンの持続を行った。手術は無事終了し帰室した。7病日に誤嚥し、呼吸状態悪化、その後ARDSとなり、11病日に死亡となった。
症例2
80歳 AS(AVA:0.86)、TR:中等度から重症、EF:60%、CABG後、高血圧、認知症、盲目
頚部骨折で入院。ASに関してはTAVIの適応あるとのことだが、頚部骨折から手術することとなった。
全身麻酔で行う方針となった。術中はネオシネジン持続でバイタル安定し、手術は終了した。3病日に退院した。6病日に調子が悪いと外来受診した。自宅で様子見ることとなったが7病日に自宅で死亡していた。
もともと、股関節術後は心合併症が増えるとされている。
ASの患者では術後に11%に何らかの合併症が起こる、死亡率が5倍になるとの報告もある。
硬膜外麻酔や深部ブロックで行う報告もあるが、抗凝固薬、抗血小板薬を内服している高齢者も多いため、施行できないことも多い。
重症AS患者では手術決定するための4つの要素がある
①術前、術後のQOL
②家族の理解
③手術チームの理解(主治医、麻酔科、循環器、コメディカル)
④経済的問題
当院でも、80-90歳台で重症ASの手術は拒否されてきた方が、頚部骨折で手術に来ることが多くなりました。術後に残念ながら亡くなった方もいらっしゃるため、術前の本人、ご家族へ厳しい説明を行い、ご理解いただければ麻酔を行っています。
今まで麻酔した感想ですが、心不全を繰り返す、少しの負荷で呼吸苦が出るなどの非代償性期のASでは術後に状態が悪化することが多く、逆に、ある程度日常生活を行える、EFが保たれている重症ASの方は無事退院していることが多いと思います。
うちの医局員にも勉強会中に失神(居眠り?)する人いるのですが、まさかAS・・・。
赤嶺
2018年2月8日木曜日
最近の抄読会
「術後呼吸合併症」に関してです。
術後呼吸合併症(Postoperative pulmonary complication: PPC)はmajour手術の1-23%に起こり、心合併症よりも一般的である。PPCとしては呼吸器感染、呼吸不全、胸水、無気肺、喘息などが多い。
リスクとしては年齢、術式、術前の状態が考えられている。
年齢は60-65歳以上がリスク
術式は上腹部(下腹部に比べて最大15倍)、血管手術がリスク
緊急手術では2-6倍、再手術では4-7倍のリスク
術前のSpO2低値が独立因子とされ
SpO2 96%と比較して91-95%では2倍、90%では10倍のリスクとされている。
また修正'(治療)可能なリスクとしては
①COPDやO-SASなどの合併症
②喫煙
③術前貧血(Hb10以下はリスク3倍)
④全身麻酔(2時間以上がリスク)、肺保護換気
⑤残存筋弛緩
⑥胃管
⑦吸気筋トレーニングでリスク減少
⑧硬膜外麻酔でリスク減少
があるので、術前にできるだけ補正を。
また、今年のBJA(PMID:29121283)に驚きの論文が掲載されました。
肺切除術(片肺換気)を受ける患者をセボ群とプロポ群に分け、PPCや予後を検討
結果はなんと、セボ群の方が術後の酸素化がよくPPCも少なく、死亡率も低かった。
(詳細は論文を)
今まで、肺切除術はTIVAが王道と習い、後輩にも教えていましたがまさか・・・。
今後の論文に注目です。
今回の抄読会はボリュームがあったため、プロは早めに無の境地に出発されていました。
頸椎症に気をつけてください。
術後呼吸合併症(Postoperative pulmonary complication: PPC)はmajour手術の1-23%に起こり、心合併症よりも一般的である。PPCとしては呼吸器感染、呼吸不全、胸水、無気肺、喘息などが多い。
リスクとしては年齢、術式、術前の状態が考えられている。
年齢は60-65歳以上がリスク
術式は上腹部(下腹部に比べて最大15倍)、血管手術がリスク
緊急手術では2-6倍、再手術では4-7倍のリスク
術前のSpO2低値が独立因子とされ
SpO2 96%と比較して91-95%では2倍、90%では10倍のリスクとされている。
また修正'(治療)可能なリスクとしては
①COPDやO-SASなどの合併症
②喫煙
③術前貧血(Hb10以下はリスク3倍)
④全身麻酔(2時間以上がリスク)、肺保護換気
⑤残存筋弛緩
⑥胃管
⑦吸気筋トレーニングでリスク減少
⑧硬膜外麻酔でリスク減少
があるので、術前にできるだけ補正を。
また、今年のBJA(PMID:29121283)に驚きの論文が掲載されました。
肺切除術(片肺換気)を受ける患者をセボ群とプロポ群に分け、PPCや予後を検討
結果はなんと、セボ群の方が術後の酸素化がよくPPCも少なく、死亡率も低かった。
(詳細は論文を)
今まで、肺切除術はTIVAが王道と習い、後輩にも教えていましたがまさか・・・。
今後の論文に注目です。
今回の抄読会はボリュームがあったため、プロは早めに無の境地に出発されていました。
頸椎症に気をつけてください。
赤嶺
2018年1月25日木曜日
1/24新見先生 勉強会
本日はA and Aの症例報告です。
症例1
79歳 重症AS 、心不全、心房細動、肥満、OSASの既往あり。
AVR、MAZEが行われたが、術後に肺炎など起こり呼吸不全で挿管、抜管を繰り返し術後14日目に全身麻酔下での気管切開術が行われた。
プロポ、ロクロで導入し、FiO2:0.4、セボ1.5%で維持していた。手術開始、気管を切開する段階まできたところで、酸素100%で酸素化を行いFiO2:0.4に戻した。その後、気管を切開し止血のため電気メスを使用した時に3cm程度の炎が上がった。生食ですぐに鎮火し気管洗浄を行い、7mmの気切チューブを挿入した。気管支ファイバーで確認したところ右上葉、中葉を中心に粘膜の焼けただれ、炭化がみられた。ICU帰室後、ヘパリン吸入、Nアセチルシステイン、抗生剤などを使用し、気管支ファイバーで観察、洗浄を毎日行った。(術直後、3日目、6日目、12日目の気管支ファイバーの画像:膿性分泌物、炭化、内膜炎症から徐々に粘膜萎縮像に変化)
心臓手術術後、肺炎後であり、心房細動や心不全の影響で血行動態安定せず、HITも併発し死亡した。
症例2
73歳 鼠径ヘルニア術を受ける患者の肺塞栓例、ADL自立
麻酔導入15分後に急にSpO2:82%、血圧73/44、脈44bpmに低下した。FiO2:1.0、肺リクルートメントを行い呼吸音確認したが異常なし。低血圧にフェニレフリンを使用したが血圧戻らず、結局エピネフリン10μg使用した。血圧157/71、SPO2:95%まで回復した。急変時、カプノグラムに異常はなかった。手術中止とし、ICUで胸部レントゲン、心エコー、12誘導心電図などの検査を行ったところ、心電図でSⅠQⅡTⅢ(右心負荷所見)を認めた、他の検査は異常なかった。その後のCT検査で右中葉下葉への肺動脈に血栓を認めた。
アメリカでは肺塞栓は年間30-60万人に起こりそのうち10万人が死亡する。WELLSのスコアリングで発生頻度を予測できる(本症例では発生率1.3%)。
肺塞栓では右心負荷所見が出現するが、心電図変化は11-52%に起こる。他にT波逆転、頻脈、SⅠQⅡTⅢがみられる。
雪が残る中、遅刻する人はいませんでした。最寄り駅が三田線で地下鉄のためか、結構雪に強い当院の出勤状態です。雪の中の出勤で緊張感があったのか、今回は船漕ぎ者いなかったと思います。
症例1
79歳 重症AS 、心不全、心房細動、肥満、OSASの既往あり。
AVR、MAZEが行われたが、術後に肺炎など起こり呼吸不全で挿管、抜管を繰り返し術後14日目に全身麻酔下での気管切開術が行われた。
プロポ、ロクロで導入し、FiO2:0.4、セボ1.5%で維持していた。手術開始、気管を切開する段階まできたところで、酸素100%で酸素化を行いFiO2:0.4に戻した。その後、気管を切開し止血のため電気メスを使用した時に3cm程度の炎が上がった。生食ですぐに鎮火し気管洗浄を行い、7mmの気切チューブを挿入した。気管支ファイバーで確認したところ右上葉、中葉を中心に粘膜の焼けただれ、炭化がみられた。ICU帰室後、ヘパリン吸入、Nアセチルシステイン、抗生剤などを使用し、気管支ファイバーで観察、洗浄を毎日行った。(術直後、3日目、6日目、12日目の気管支ファイバーの画像:膿性分泌物、炭化、内膜炎症から徐々に粘膜萎縮像に変化)
心臓手術術後、肺炎後であり、心房細動や心不全の影響で血行動態安定せず、HITも併発し死亡した。
症例2
73歳 鼠径ヘルニア術を受ける患者の肺塞栓例、ADL自立
麻酔導入15分後に急にSpO2:82%、血圧73/44、脈44bpmに低下した。FiO2:1.0、肺リクルートメントを行い呼吸音確認したが異常なし。低血圧にフェニレフリンを使用したが血圧戻らず、結局エピネフリン10μg使用した。血圧157/71、SPO2:95%まで回復した。急変時、カプノグラムに異常はなかった。手術中止とし、ICUで胸部レントゲン、心エコー、12誘導心電図などの検査を行ったところ、心電図でSⅠQⅡTⅢ(右心負荷所見)を認めた、他の検査は異常なかった。その後のCT検査で右中葉下葉への肺動脈に血栓を認めた。
アメリカでは肺塞栓は年間30-60万人に起こりそのうち10万人が死亡する。WELLSのスコアリングで発生頻度を予測できる(本症例では発生率1.3%)。
肺塞栓では右心負荷所見が出現するが、心電図変化は11-52%に起こる。他にT波逆転、頻脈、SⅠQⅡTⅢがみられる。
雪が残る中、遅刻する人はいませんでした。最寄り駅が三田線で地下鉄のためか、結構雪に強い当院の出勤状態です。雪の中の出勤で緊張感があったのか、今回は船漕ぎ者いなかったと思います。
赤嶺
2018年1月18日木曜日
病院広報誌
1月の病院広報誌「プラザIMS」に麻酔科が紹介されました。
紙面の制限があるため広く浅い内容ですが、麻酔科の歴史や仕事、当院麻酔科の紹介などが載っています。
今回の記事のために麻酔の歴史を調べてみたのですが、今の全身麻酔が発見される前の手術はまさに拷問に近く、手術受ける側は痛みで失神するわ、手術する側は患者の叫び声がトラウマになるわで、まさに地獄絵図だったようです。当時の外科手術書に、手術のポイントとして「押さえつけて素早く行う」との記載があるようです、まさに力尽く、恐ろしい限りです。近年の外科手術の発展は、まさに麻酔の発展と切り離せないものだと思います。あまり表に出ることはない麻酔科ですが、知る人ぞ知る縁の下の仕事人としてこれからも頑張って行きます。
紙面の制限があるため広く浅い内容ですが、麻酔科の歴史や仕事、当院麻酔科の紹介などが載っています。
今回の記事のために麻酔の歴史を調べてみたのですが、今の全身麻酔が発見される前の手術はまさに拷問に近く、手術受ける側は痛みで失神するわ、手術する側は患者の叫び声がトラウマになるわで、まさに地獄絵図だったようです。当時の外科手術書に、手術のポイントとして「押さえつけて素早く行う」との記載があるようです、まさに力尽く、恐ろしい限りです。近年の外科手術の発展は、まさに麻酔の発展と切り離せないものだと思います。あまり表に出ることはない麻酔科ですが、知る人ぞ知る縁の下の仕事人としてこれからも頑張って行きます。
赤嶺
2018年1月11日木曜日
懇親会
昨日、川崎幸病院麻酔科の高山先生と4月から研修でお世話になる宮﨑先生、神門先生、そして新見先生の5人で懇親会を行いました。
専攻医が研修でお世話になるときには毎回顔合わせの意味も込めて開催しており、今回で5回目(正確には覚えていませんが)の懇親会になりました。毎回、神保町のお店を利用させて頂いており、店のマスターもそろそろ顔を覚えて頂けてるようでした。
高山先生から幸病院に関するお話しや、麻酔に関する熱い話、新見先生からの医局、プログラム運営の話し、毎回驚かされる新見先生の若かりし頃の麻酔に関して(水銀柱血圧計、SpO2はない、Aラインは心外麻酔で取り合い、エーテル麻酔をやっている施設もあった、もはや麻酔の歴史そのものを体験されています)など、とても盛り上がりました。
宮﨑先生、神門先生も目をキラキラさせて早く研修に行きたい雰囲気でした(言い過ぎ?)。
2人に続き、今後研修を行う先生も多数いるので、先に行く先輩の特に宮﨑先生が後輩の鏡になるような研修をしてもらえればと思います。
専攻医が研修でお世話になるときには毎回顔合わせの意味も込めて開催しており、今回で5回目(正確には覚えていませんが)の懇親会になりました。毎回、神保町のお店を利用させて頂いており、店のマスターもそろそろ顔を覚えて頂けてるようでした。
高山先生から幸病院に関するお話しや、麻酔に関する熱い話、新見先生からの医局、プログラム運営の話し、毎回驚かされる新見先生の若かりし頃の麻酔に関して(水銀柱血圧計、SpO2はない、Aラインは心外麻酔で取り合い、エーテル麻酔をやっている施設もあった、もはや麻酔の歴史そのものを体験されています)など、とても盛り上がりました。
宮﨑先生、神門先生も目をキラキラさせて早く研修に行きたい雰囲気でした(言い過ぎ?)。
2人に続き、今後研修を行う先生も多数いるので、先に行く先輩の特に宮﨑先生が後輩の鏡になるような研修をしてもらえればと思います。
| 最後にみんなでパシャり |
赤嶺
2018年1月10日水曜日
1/10新見先生 勉強会
本日は弓部置換術の脳送血に関する勉強会です。
順行性脳分離送血(ACP)は弓部置換術の初期から行われていたが、1960年代に一過性脳障害や予後が悪いとの報告がされ、一時衰退した。1975年には低体温循環停止(HCA)が報告され、広まった。HCAでは血管操作が少なくなる一方で時間制限がある。40分の停止で脳卒中の発生率、60分の停止で死亡率が上昇すると報告された。体温を下げていくと脳血流、脳代謝は徐々に低下していくが、22℃以下では脳血流量の低下よりも脳代謝の低下がより大きく起こるため、脳保護作用がある(αスタット管理)。
1990年代に逆行性脳還流(RCP)が報告された。脳保護時間は80分程度効果があるとされ、ACPとの比較でも死亡率7.9(RCP) vs 14(ACP)、脳卒中2.4 vs 6.5と良好な結果であった。RCPの特徴として、低体温中に行うことができる、手術操作が簡便になる、逆行性のため塞栓物質を除去できる、脳代謝のサポートができるなどの点がある。
1980年代にはACPが見直されてくる。(ACPの図表の説明)
心臓外科学会から、RCP +HCA vs ACPの予後に関する論文が発表された。
2009年〜2012年で弓部置換術を受けた16,218例を対象に行われた。
除外クライテリア、プロペンシティマッチングによりそれぞれ1,141例が分析対象となった。
結果は死亡率、脳卒中、心合併症などに有意差はなかった。有意差があったのはICU滞在期間で、ACP群の方が長かった。脊髄障害は両群とも3%前後あった。脳障害のリスク因子は術前の患者状態が重要であることがわかった。術中体温に関して、HCA/RCP群は20℃以下が9%、25℃以下が18%、ACP群は25℃以上が多かった。
(鎖骨下、腋窩送血の図表の説明)
脳組織酸素飽和度の使用に関しては、いくつかのレビューで有効性が低いとの結果が出ている。送血カニュラの位置異常は指摘できる可能性がある。脳組織酸素飽和度を用いたアルゴリズムはエビデンスレベルが低い。しかし、すでに多くの施設で使用されており、今後新しいRCTは出ることなく標準モニターとなっていくだろう。
本日の内容は専攻医1-2年目には難しかったかもしれません。実際、プロは船漕ぎ中?だったのか2回位、本を落としてました(笑)。早く内容について来れるよう頑張ってください。
順行性脳分離送血(ACP)は弓部置換術の初期から行われていたが、1960年代に一過性脳障害や予後が悪いとの報告がされ、一時衰退した。1975年には低体温循環停止(HCA)が報告され、広まった。HCAでは血管操作が少なくなる一方で時間制限がある。40分の停止で脳卒中の発生率、60分の停止で死亡率が上昇すると報告された。体温を下げていくと脳血流、脳代謝は徐々に低下していくが、22℃以下では脳血流量の低下よりも脳代謝の低下がより大きく起こるため、脳保護作用がある(αスタット管理)。
1990年代に逆行性脳還流(RCP)が報告された。脳保護時間は80分程度効果があるとされ、ACPとの比較でも死亡率7.9(RCP) vs 14(ACP)、脳卒中2.4 vs 6.5と良好な結果であった。RCPの特徴として、低体温中に行うことができる、手術操作が簡便になる、逆行性のため塞栓物質を除去できる、脳代謝のサポートができるなどの点がある。
1980年代にはACPが見直されてくる。(ACPの図表の説明)
心臓外科学会から、RCP +HCA vs ACPの予後に関する論文が発表された。
2009年〜2012年で弓部置換術を受けた16,218例を対象に行われた。
除外クライテリア、プロペンシティマッチングによりそれぞれ1,141例が分析対象となった。
結果は死亡率、脳卒中、心合併症などに有意差はなかった。有意差があったのはICU滞在期間で、ACP群の方が長かった。脊髄障害は両群とも3%前後あった。脳障害のリスク因子は術前の患者状態が重要であることがわかった。術中体温に関して、HCA/RCP群は20℃以下が9%、25℃以下が18%、ACP群は25℃以上が多かった。
(鎖骨下、腋窩送血の図表の説明)
脳組織酸素飽和度の使用に関しては、いくつかのレビューで有効性が低いとの結果が出ている。送血カニュラの位置異常は指摘できる可能性がある。脳組織酸素飽和度を用いたアルゴリズムはエビデンスレベルが低い。しかし、すでに多くの施設で使用されており、今後新しいRCTは出ることなく標準モニターとなっていくだろう。
本日の内容は専攻医1-2年目には難しかったかもしれません。実際、プロは船漕ぎ中?だったのか2回位、本を落としてました(笑)。早く内容について来れるよう頑張ってください。
赤嶺
2018年1月9日火曜日
1/9症例検討会
新年明けましておめでとうございます。新年初日の1/4から、ほぼ全力でオペ室が稼働して、大騒ぎの当院です。今年もよろしくお願いします。
本日は「帝王切開中のST変化」に関してです。
39歳女性、2回目のC/S。前回は胎児ジストレスで全麻カイザーとのこと。現在37w5d、C/S以外に既往なし。麻酔はCSEAで行い、手術開始前の麻酔レベルはTh4前後で冷感消失であった。麻酔直後は少し血圧下がったが、数回の昇圧剤で血圧は安定し手術開始となった。10-15分後に児は生まれ、その数分後に1回目のアトニン5Uを点滴静注(5分程度)したが、子宮収縮が不良で1回目終了から3分後に2回目のアトニン5Uを点滴投与した。2回目投与後、収縮期血圧70mmHg台、HR 93bpmとなったためネオシネジンで昇圧しすぐに90mmHg台となった。その10分後に再度血圧が70mmHg、HR102となりネオシネジンで昇圧を行ったが、嘔気を訴え、心電図上ST低下を認めた。胸痛はなかった。輸液負荷し昇圧することで5-10分後には嘔気、ST変化は改善した。その後手術は順調に終わった。術後も症状、ST変化なく順調に経過し退院となった。
帝王切開中のST変化は急激な循環動態の変動や子宮収縮薬の影響で起こる。
麻酔直後は仰臥位低血圧症候群、執刀後は出血による血圧低下で心筋酸素バランスが崩れやすい。それにはST低下を伴うことが多くST上昇は稀である。子宮収縮薬であるオキシトシン(アトニン)は血圧低下、心拍数上昇作用がある。早産や誘発中の患者さんではオキシトシンの感受性が低下するため過量投与に注意が必要である。ST低下の割合はオキシトシン5Uで7.7%、10Uで21%みられ、さらに投与2分後の血圧低下も10U群で有意に多かったとの報告がある。
また、ボーラス群(15秒で投与)、点滴静注群(5分以上)の比較では、ボーラス群で血圧低下、心拍上昇、ST低下が多かった。
他に、術中で使用されるものでメチルエルゴメトリンマレイン酸(パルタン)がある。
パルタンは冠攣縮誘発薬として使用されるもので、子宮収縮に第一選択で使用してはならない。使用中は常にST変化に注意しなければならない。
ST変化の対処法は、酸素投与、輸液、昇圧が基本である。
冠痙縮が疑われる場合、選択としてニトログリセリン、Caブロッカー、ニコランジルがある。ニトログリセリンは子宮弛緩作用、血圧低下作用が強いため使用は控える方が良い。
Caブロッカーは子宮弛緩作用が弱いとされており、使用することができるが血圧低下作用に注意が必要である。ニコランジルの子宮弛緩作用は不明であるが前述の2薬剤よりも血圧低下作用は弱いため比較的安全に使用できると思われる。
本日の発表は、年末にかなり暴れる君をやった向井先生でした。プレゼン数分前に配布資料の印刷をするなど、騒がしい部分もありましたが、ボスが到着する頃にはチャッカリ準備万端を装ってました。
年末年始に準備したと思いますがご苦労様でした。先生にとって、目が覚めるような成長がある1年になることを期待しています。
本日は「帝王切開中のST変化」に関してです。
39歳女性、2回目のC/S。前回は胎児ジストレスで全麻カイザーとのこと。現在37w5d、C/S以外に既往なし。麻酔はCSEAで行い、手術開始前の麻酔レベルはTh4前後で冷感消失であった。麻酔直後は少し血圧下がったが、数回の昇圧剤で血圧は安定し手術開始となった。10-15分後に児は生まれ、その数分後に1回目のアトニン5Uを点滴静注(5分程度)したが、子宮収縮が不良で1回目終了から3分後に2回目のアトニン5Uを点滴投与した。2回目投与後、収縮期血圧70mmHg台、HR 93bpmとなったためネオシネジンで昇圧しすぐに90mmHg台となった。その10分後に再度血圧が70mmHg、HR102となりネオシネジンで昇圧を行ったが、嘔気を訴え、心電図上ST低下を認めた。胸痛はなかった。輸液負荷し昇圧することで5-10分後には嘔気、ST変化は改善した。その後手術は順調に終わった。術後も症状、ST変化なく順調に経過し退院となった。
帝王切開中のST変化は急激な循環動態の変動や子宮収縮薬の影響で起こる。
麻酔直後は仰臥位低血圧症候群、執刀後は出血による血圧低下で心筋酸素バランスが崩れやすい。それにはST低下を伴うことが多くST上昇は稀である。子宮収縮薬であるオキシトシン(アトニン)は血圧低下、心拍数上昇作用がある。早産や誘発中の患者さんではオキシトシンの感受性が低下するため過量投与に注意が必要である。ST低下の割合はオキシトシン5Uで7.7%、10Uで21%みられ、さらに投与2分後の血圧低下も10U群で有意に多かったとの報告がある。
また、ボーラス群(15秒で投与)、点滴静注群(5分以上)の比較では、ボーラス群で血圧低下、心拍上昇、ST低下が多かった。
他に、術中で使用されるものでメチルエルゴメトリンマレイン酸(パルタン)がある。
パルタンは冠攣縮誘発薬として使用されるもので、子宮収縮に第一選択で使用してはならない。使用中は常にST変化に注意しなければならない。
ST変化の対処法は、酸素投与、輸液、昇圧が基本である。
冠痙縮が疑われる場合、選択としてニトログリセリン、Caブロッカー、ニコランジルがある。ニトログリセリンは子宮弛緩作用、血圧低下作用が強いため使用は控える方が良い。
Caブロッカーは子宮弛緩作用が弱いとされており、使用することができるが血圧低下作用に注意が必要である。ニコランジルの子宮弛緩作用は不明であるが前述の2薬剤よりも血圧低下作用は弱いため比較的安全に使用できると思われる。
本日の発表は、年末にかなり暴れる君をやった向井先生でした。プレゼン数分前に配布資料の印刷をするなど、騒がしい部分もありましたが、ボスが到着する頃にはチャッカリ準備万端を装ってました。
年末年始に準備したと思いますがご苦労様でした。先生にとって、目が覚めるような成長がある1年になることを期待しています。
赤嶺
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