「糖尿病患者の周術期管理」というテーマで勉強会がありましたので、その内容について簡単にご紹介します。
高血糖により、周術期の死亡率が上がったり、創傷治癒遷延、血小板凝集機能低下、免疫能低下、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がるとされている。
①術前管理について
1. 未治療の糖尿病がないか?
・糖尿病と診断されていなくても、多飲多尿やメタボリックシンドローム、心血管疾患の既往があるような患者ではHbA1cの評価をするべき。
・糖尿病がなくても、周術期のストレスでカテコラミン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンなどの上昇が起こり、stress hyperglycemiaという状態になることがある。この場合、ストレスがなくなれば血糖値は低下する。
2. 血糖コントロールについて
・HbA1cが6-8%にコントロールされていれば、そのまま手術にすすんでOK。HbA1c 5%以下、9%以上の場合は緊急手術でなければ延期が望ましい。
・血糖値≧300mg/dLのときは、ケトーシスの評価を行う。糖尿病性ケトアシドーシス(血糖値>250mg/dL、ケトーシス、pH≦7.30、HCO3-≦18mEq/L)と診断されれば、緊急の対応が必要。ただ、尿中ケトンが陰性でも、血中ケトンが陽性になることがあることがあるので注意する。
3. 合併症の評価
・心血管系(虚血性心疾患)、自律神経障害、腎障害などについて評価する。糖尿病性の腎障害は微量アルブミン尿をチェックする。
②手術前日~当日にかけて
・HbA1c<8.5%が目標。
・術前の絶食は1回のみにする。糖尿病関連薬以外の内服薬は、できる限り通常通り継続。糖尿病関連薬は当日朝の分を中止、メトホルミンについては前日夕方から中止する。
・朝一件目の手術とする。
・血糖値は90~180mg/dLでコントロール。90mg/dL未満でグルコース投与、180mg/dL以上でインスリン3単位皮下注、300mg/dL以上で内科医コールなど、対応する。
・手術当日朝から10%グルコース 40ml/hで持続投与開始。
※血糖コントロールができていないが手術を待てない患者、2食以上絶食する患者では、インスリンの持続静注を考慮する。その際、必ずグルコースも投与しながら、1-2時間ごとに血液ガス分析で血糖値の評価をすること。
・麻酔で気をつけること
PONV対策として、TIVAで行う、笑気の使用を避ける、区域麻酔で行うなど。デキサメタゾンを使用する場合は減量する。
また、疼痛管理として硬膜外麻酔が有用。疼痛などによるストレス反応を抑えて血糖値上昇を防ぐことができるが、自律神経障害のある患者では血圧低下に注意する。
③術後管理
インスリンの持続静注をしていた場合、24時間のトータル量の半分を基礎インスリンとしてslow actingの薬へ移行。残りの半分は、速効性インスリンを皮下注して対応しながら、切れ目のないように移行していく。
などなど、盛りだくさんの内容でした。
当科では、血糖コントロール不良の糖尿病患者さんの手術については今まで個々に対応してきましたが、これを機に、共通のプロトコルを作成し病棟とも共有しようという話になりました。
気のせいか、最近ケトアシドーシスの話をよく聞きます。糖尿病コントロール不良のDKA、SGLT2阻害薬内服患者のeuglycemic DKA、食欲不振すぎてstarvation ketoacidosisなど。とくに、A-lineもとられておらず血糖値が正常な例では対応が遅れやすいかと思いますので、おかしいと思ったらすぐ血液ガス、ケトン体測定を心がけたいと思います。
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